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(いもりねかだん) 募集案内 作品案内
■ 平成30年度の募集 入選作 発表
たくさんのご応募 ありがとうございました。以下の作品が入選されました。


伝えるための準備
学校法人四條畷学園 理事長 小谷 明

 今年のノーベル医学・生理学賞に京都大学の本庶佑特別教授が選ばれました。記者会見での「偶然見つかったものを面白いと直感した」という発言がとても印象に残っています。科学の世界では偶然から生まれた発見は数多くあるそうですが、一方で、「偶然は、準備のできていない人は助けない」という名言もあるそうです。

 私はこれまでの経験を通じ、人と人で成り立っている世の中で最も大切なことは「出会い」ではないかと思ってきました。数多くの人や言葉との出会いもそのほとんどは偶然の産物と言えます。このような偶然の出会いの中からかけがえない出会いを発見するためには、日頃から自分の思いをしっかり伝えるための準備をしておくことが大切になります。
 例えば、最近注目されているアクティブラーニングで最も重要だと言われているコミュニケーションスキルを身につけることです。世の中には、このスキルを身につけるための様々な方法が紹介されていますので、是非、実践してスキルを高めて戴きたいと思います。
 そして、伝えるための準備として、私がより大切だと思っているのは、上記スキルを最大限活かすための「何を伝えるか」「何を感じたか」というコンテンツを充実させておくということです。日頃から問題意識や関心のアンテナを高めておくということになります。この点について、色々考えさせられた話しをご紹介します。

 最近、「16歳の語り部」という本を読みました。「平成29年度 児童福祉文化賞」を受賞した本です。東日本大震災から5年目の年に出版されましたが、本書は、震災当時、宮城県東松島市の小学5年生だった子どもたち三人による等身大の「語り」をまとめた一冊です。5年を経て16歳になった子供たちが思ったことは自分たちが経験したり、感じたことを語り、伝えてゆくことでした。その中で、11歳の体験を語りながら、「伝えること」の大切さに気づいたと話しています。

以下は受賞の際のスピーチの一部(抜粋)です。

 「日本に甚大な被害をもたらした東日本大震災から、6年が経過しました。6年前のあの日、この本を書いた3人はまだ小学5年生でした。日常の風景が津波に飲まれ、目の前で人が流され、友人をなくし、家をも失う。私たちはこの出来事を受け止め、向き合うために5年という時間を要しました。
 人が目の前で津波に飲まれるなか、何もせずに逃げたこと。なぜ自分は生きているのかと、悩み苦しんだこと。みんな復興のために汗を流すなか、いつまでも過去のことで悩んでいる自分はいったい何なのか。(中略)」
 「5年を経て私たちが出した結論は、二度と、同じ悲しみが繰り返されないようにと願いを込め、語り、伝えてゆくことでした。(中略)」
 「この本は、過去を綴っただけの本ではありません。私たちが過ごしてきた5年間を振り返り、未来を語る、希望の本です。今日、インターネットやSNSが普及し、誰もが簡単に多種多様な表現をできるようになりました。自分が情報を発信する立場になったとき、伝え方ひとつで相手の捉え方が変わることに気がつきます。そして、どうすれば自分のイメージが伝わるのか、どう表現すればよいのかを考え、模索しはじめます。(後略)」

 16歳の語り部にとって、5年の歳月は大切なことを伝えるために必要な準備期間であったようにも思えます。11歳の体験を通じて切実に感じたことが、その後の言葉やスキルの習得を経て、16歳の語り部を誕生させたと言えるでしょう。

 皆さんは今回の「飯盛嶺歌壇」の作品づくりを通じて、感じたことを「どうすれば自分のイメージが伝わるのか、どう表現すればよいのかを考え、模索」したはずです。
今後とも、今回のような「感じる力」「伝える力」を磨く機会があれば是非活かして欲しいと思います。そして、このような伝えるための準備ができることにより、これからの偶然の出会いの中から皆さん自身を成長させてくれるかけがえのない人との出会いの発見が数多く生まれることを願っています。

 



飯盛嶺歌壇 平成30年度 入選作品 紹介

厳正な審査の結果、以下の作品が入選作品として選ばれました。

【小学生入選作品】

【天 賞】
さびしいと学園にかたるこの思い最後のときももう近づいて
【地 賞】
学校のまどから見えるけしきとはすごく大切わすれられない
まど開けて空気入れかえ息を吸う今日も一日がんばりました
【人 賞】
ママが見るいもりねかだん何書こうだめ出しせずにほめてください
カタマランちからをあわせ一位とるぞいきを合わせてゴールめざせ
かぶとむしそらをとぶむしぶーんぶんとても楽しそうほら木にとまった
がっこうでこくごのじかんこえあわせおむすびころりんすっとんとん
【佳 作】
いいもりのげんきなこどもがくえんのたのしいこどもいっぱいえがお
いもうととおそろいみずぎみずあそびわくわくするねだいすきななつ
あと六日たなばたになるでもちょっとねがいきまらずかざりつける
雨がふりてるてるぼうずつり下げるザーザー雨がぽつぽつ雨に
すずしいなみんなの歌がきれいだなコオロギさんの合唱団だ
織姫とひこ星出会う日七夕に雨がいっぱいふってしくしく
雨が降りかさをさしてる私たち色とりどりの花をさかせる
秋風にのせられ空をまうかれ葉ひとりぼっちで空を旅する
くらやみでせんこうはなびなんぼんもかぞくで楽しく今年もやりたい
家族の絵感しゃの気持ちいろいろな家族全員いつもありがと
古びてる六年間のランドセル校舎のにおいしみつくほどに
さあやるぞつなぐバトンに思い込め友とつかむぞ栄光の旗
深緑飯盛山の衣替え命が芽生え森いきいきと
黄金の日差しを浴びて大地立つ春から夏へ飛ぶ甲虫



【中学生入選作品】

【天 賞】
気が付けば入学してから二年過ぎ全ての行事が最後の行事
【地 賞】
夏祭り周り見渡しゃどんちゃん騒ぎ空では花が明るく笑う
【人 賞】
かさかさの田んぼの肌に水がしみ喜び歌う小さき者たち
【佳 作】
紫陽花の雫も震える名演奏四條畷のクラブ参観
音楽は国や人種を選ばない世界をつなぐ大きな力
五月晴映ゆる緑の躍りしに今が盛りと一人微笑む
「かっとばせ」今こそ響けホームラン青春輝け甲子園
しんゆうは親しいのではなく真の友意味は違えど読み方同じ
お母さん毎日毎日ありがとう朝早くからおいしい弁当



【高校生入選作品】

【天 賞】
晴れの日の細くたなびく雲一つ頑張りすぎたため息のようで
【地 賞】
紅葉はやがて色褪せ地を覆い次なる赤の礎となる
今日もまた通りすぎてくきみの顔想いをそえてこぼすため息
【人 賞】
咲いたならいずれは枯れてしまうからずっと蕾でいちゃだめですか
生徒手帳かたい笑顔で写ってる別人みたい四月の僕は
何気なく使おうとしてひいてみる赤いストロー小さな幸せ
グラス越し夏空溶かすソーダ水滴る雫指を伝って
【佳 作】
ツバメの子母さん待ってるまだかなあ来た来た母さん喜ぶ子ども
好きなこと一生懸命させてくれる全力応援家族ありがとう
好きですと告白されて心舞う設定していた目覚ましが鳴る
夕涼み短冊揺れる風鈴の涼しい音色冷やしたすいか
ちょっとだけ大人になれたこの夏はいつも以上に輝いている
春になり新生活が始まって毎日笑顔あふれてる
髪伸びた体重増えた背が伸びた心の成長追いかけていく
月日経て来たる日待ちて楽しめど友の別れもまた近くなる
ひまわりの浴衣をまとい空見れば一面に咲く花畑かな
天と地の力を借りて育まれ笑顔を届ける小さな太陽
君おもう素直になれず遠回りいつかあなたと同じけしきを
毎日が記念日みたいに輝くと朝起きるのが幸せになる
帰り道春夏秋冬変わってく景色が違えば匂いも違う
大好きなあの人いつも変わらずに画面の中で輝いている
時流れ変わる景色眺めると大きな違いわかってくるよ
手のひらの指す先に願いあるかぎり勇者となって祈(たたか)い続ける
聞こえくる耳をすませば蝉の声あの夏の日と暑き思い出
戦争で多くの命亡くなって悲しむ人が減ることを祈る
憧れは遠い存在きらきらと心の中にあなたの存在
空に架かる雨のあとに君と見た絆という名の七色の橋
雪の花君と眺める街角に募る想いと積もる淡雪
暗い空地面を照らす青の花この季節だけ転地逆転
もう来たの夏のはじまり夏休みはやくすぎてく高校生活
友達とすごした日々を忘れない力に変えて前へと進む
放課後の構内響く音達もあと少しで遠い思い出
親子での喧嘩がひけてベランダに寝転び見ゆる星の瞬き
三年の高校生活終盤であまりの短さ驚き隠せず
青き海煌めく水面白き波見上げる空に雲一つなし
帰りの空真っ暗闇やグラデーション毎日違うそれが好き
変わらない毎日こそを大切に目には見えない奇跡のあつまり
恋心喜怒哀楽のくり返し恋愛の答えあればいいのに
おかあさんいつも見てるよ大変さあなたみたいに私もなるね
毎日の努力の汗が糧となり全員で行く栄光の場所
飛び立とう桜舞い散るあの季節新たな道へ希望と共に
涼みよし水差し構えて厨立つどうしてくれようこの夏野菜
待ち合わせ走る姿がおかしくて笑ってはじまる二人の時間



【短大生入選作品】

【天 賞】
さくら咲く別れと出会いは突然に運命受け止め新たな日々へ
紫陽花の色の移りを楽しんで何気ない日々また繰り返す
【地 賞】
アルバイト小さな小さなお客様ちょっと待ってねおつりまだだよ
クリスマス夜が輝く冬空に雪が降りだし白く染められ
【人 賞】
「ありがとう」慣れない生活続くなか感謝の言葉でつながる友情
短大生気持ち入れ換え挑む通学路(みち)現在(いま)より未来(さき)へ頑張れ私
【佳 作】
真夜中の不意に聞こえるあくびさえ愛しく感じる君との電話
見てみてと手を引き歩く子ども達はじめましての朝顔の顔
「明日来る?」明日じゃないけどまた行くよ次会う時まで覚えていてね
経験やキャリアを重ね学ぶことたくさんあってメモ真っ黒
春が過ぎさくらの木から緑の木夏の訪れ感じる頃かな
朝揺れて眠気を誘い進んでく人に押されていつもの場所へ
今できる最大限を出しきれば未来の自分は輝いている
眺めてる七色の橋時を止め雨のにおいと澄んだ青空
旋律をかなでる君の横顔を眺めて思ふ幸せの日々
春が過ぎ雨がしとしと降り出せば「夏が来るよ」と蝉が顔出す



【大学生入選作品】

【天 賞】
学び舎につづく激坂日々登る登り切れるか人生の山
難しい授業たくさん受けてみて厳しさを知る一年の春
【地 賞】
実家から電話が届き報告会今ある自分は家族のおかげ
家を出て風うけながらペダル漕ぐ流れる景色に一匹の猫
【人 賞】
高校で得た体力を生かせずに家に帰るとすぐに就寝
疲れても家に帰ると暖かく待ってくれてる大事な家族
【佳 作】
SNS本当にいいのその投稿君の気持ちは誰かの心に
朝早く電車に揺られウトウトと友はまだまだ夢の途中で
帰り道商店街の明かり消え静かな夜道響く足音
テストがね近づくたびに増えていくどうしたもんか課題と体重
毎日が勉強ばかり追われるが友達いっぱいここ天国
朝起きて髪に化粧に頑張るが登山で汗かき寝起きに戻る
駅からは徒歩一分もかからずに大学に着く好条件
大学で出会えた仲間この先も一期一会の同級生
実習で未来の自分想像し夢に向かって頑張る決意
一人暮らしご飯食べると聞こえてくる隣の家族にぎやかな声


編集後記

 『飯盛嶺』第二十歌集をお届けいたします。第一集の刊行から今年でちょうど二十年、つまり、成人となりました。折しも、平成は今年で終わり、来年からは新しい元号となります。そういった節目の時にあたりますが、歌集は例年と変わりなくお届けしています。
 言葉で綴られた三十一音の調べには、いつの時代も変わらない、児童・生徒・学生の素直な心が表現されています。自分と向き合い短歌を詠じる、歌集を開き自作を含めた様々な短歌を味わう、言葉を通したこれらの営みが大切です。
 歌集には、四條畷学園で学ぶ児童・生徒・学生の生きた姿が収められています。喜怒哀楽、春夏秋冬、全て生きている証です。本歌集の表紙は、学園学舎の初めての冬景色です。これも自然の営みのなかのひとつの生きた姿です。
 学園の歌集が成人式を迎えることができたことに、建学の精神「報恩感謝」の気持ちをこめて祝いたいと思います。そして、これからも学園とともに歩んでまいりたいと思います。
 最後になりましたが、第二十歌集の発行にあたり、さまざまなところでご助力をいただきました多くの関係者の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。


四條畷学園 飯盛嶺歌壇委員会 

 

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