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(いもりねかだん) 募集案内 作品案内
■ 令和元年度の募集 入選作 発表
たくさんのご応募 ありがとうございました。以下の作品が入選されました。


「令和」の時代に歌をつくる意味
学校法人四條畷学園 理事長 小谷 明

 「令和」改元から半年が経ちました。改めて、万葉集に因んだ新元号に込められた意味を通じ、「令和」の時代を生きる皆さんへのメッセージを送りたいと思います。

 今回の改元に際し、西暦と元号の違いについて、「西暦というものが、ずっと(続く)本のページ数だとすれば、元号というのは日本だけが持っている『章』、その章があるから(時代の)切り替えができるのではないでしょうか。」という発言がメディアで話題になっていました。
 確かに、小説や教科書などの本には必ずと言っていいほど「章」があります。機能性だけであればページの表示で十分のはずですが、現実に「章」がない本が想像できないのはなぜでしょうか。私は「章」が物語(ストーリー)のまとまりとして共通イメージを喚起するからではないかと思っています。共通イメージを持つことは感動を共有することになり、読者との深いコミュニケーションにもつながるからです。

 最近ではSNSなどのコミュニケーションツールの活用により、数多くの人との出会いが可能になりました。一方で、世の中でいじめなどの人権問題やトラブルがむしろ多発しているのをみると、相手の気持ちや考え方を深く理解するためのコミュニケーションに物語の要素が欠けているような気がします。日常のコミュニケーションにおいても、単なる言葉のやりとりではなく、互いの物語を通じた感動の共有があれば、相手の気持ちや考え方についての理解がより深まることになると思います。

 今回の飯盛嶺歌壇に応募された皆さんは、気持ちや印象という目に見えないものから歌というかたちの物語をつくったことになります。せっかくですから、自分のつくった歌について、感想や印象を含めて周りの人たちとコミュニケーションを図り、互いの気持ちや考え方についての理解を深めて下さい。そして、是非この機会に、感性を磨くために、感じたことを言葉として書き留め、伝える習慣を身につけて頂きたいと思います。

 次のとおり、万葉の時代から多くの人が歌をつくってきたのは、「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」というわが国の人間観・平等観が継承されているということを示しています。特に素晴らしいのは、千二百年余り前、当時の世の中の名もなき人の歌が数多く採用されているということです。どのような立場の人がつくろうが「歌の前では平等」、すなわち、「感動ファースト」ということです。日本には歌というかたちで表現された一人ひとりの感動の共有を何よりも大切にする素晴らしい伝統が
あるのです。

「『令和』には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、という意味が込められております。万葉集は、千二百年余り前に編纂された日本最古の歌集であるとともに、天皇や皇族、貴族だけでなく、防人や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、我が国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書であります。」( 「総理大臣談話」より)

 これからの時代、少子高齢化、本格的なAIの普及、国際化等により、これまで以上に変化の激しい時代が到来するものと予想されます。自分の考え方をしっかり持つことはもちろんですが、多様な価値観を持つ他者に対し深く理解できる感性とコミュニケーション能力を身につけることが求められる時代になります。その意味で、新元号にはこれからの時代にも通じるメッセージが込められているとも言えます。
 大切なことはこれからの人生で、皆さんが歌を生み出した時と同じように、「まず、つくってみる」「まず、やってみる」という前向きな気持ちで様々なことに挑戦することです。挑戦や行動がないところに感動の共有など生まれないということをしっかり理解して欲しいと思います。
 最後になりますが、「令和」には、これから様々なことに挑戦する皆さんに次のようなエールが込められています。

「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然。こうした日本の国柄を、しっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたい、との願いを込め、『令和』に決定いたしました。」(「総理大臣談話」より)

 「令和」という時代を生きる皆さん一人ひとりが、数多くの感動を共有できる人と出会い、皆さんの人生が素晴らしい物語になることを願っています。

 



飯盛嶺歌壇 令和元年度 入選作品 紹介

厳正な審査の結果、以下の作品が入選作品として選ばれました。

【小学生入選作品】

【天 賞】
小さな手握りゆっくり歩き出すついに私も六年生だ
【地 賞】
六年はいろんな事が最後だよまたすごしたいこの学校で
【人 賞】
夏の朝めざましいらずセミのこえ虫のこえにもかんしゃしよう
ママにいうてつだいしようかママがいう宿題しなさいかたがしぼんだ
夏模様火の粉打ち上げきれいだなゆかたすがたで片手にうちわ
【佳 作】
これからをあかるくすごすなかないでげんきにすごすなかまとあそぶ
プールでねがんばりましたかおつけをうれしかったよたのしかったよ
がっこうでブランコするとたのしいなあしがはっぱにちかづいていく
なつやすみまいにちやるぞおてつだいおふろそうじにせんたくたたみ
おとうとがねがえりしたよたいへんだがんばらなくちゃ秀太おにいちゃん
ほたるこいここでまってるいもうとといのちのひかりひかりかがやけ
夏よぞらとおくで花火空にちる行きたかったなその真下まで
見上げるとにっこりわらうスーパームーンぼくの足下明るく照らす
友達が応援しててうれしいな勇気が出て最高だった
おねえちゃん剣道ばなしいつもする楽しそうにねわたしもやりたい
アサガオがあさのひかりをあびているむらさきいろのはなびらをして
ありがとうみんなが笑ううれしくて幸せなあにそれは今です
昼休みグローブかたてに運動場楽しい時間まっているんだ
めちゃ暑い水着もすぐにからっからプールに入り我は復活
夏休みサッカーやって傷だらけいっぱい勝っていい夏休み
六年もいいもりやまは変わらないアルバムにあるページにきざむ
もう最後このせいふくとお別れだ卒業までは笑って遊ぼ



【中学生入選作品】

【天 賞】
該当者なし
【地 賞】
つらくても走る分だけ速くなる汗とともに踊る『一走懸命』
【人 賞】
せみが鳴き今日から始まる夏休み宿題終わらず泣く最終日
【佳 作】
朝起きてせみがみんなで話してる何をしようか早くしようよ



【高校生入選作品】

【天 賞】
今年もまた本音隠した思春期の気付かないふり過ぎる母の日
【地 賞】
不器用な父が作ったお弁当甘いようなしょっぱいような
曇り空跳ねる雨粒夏未満町を彩る紫陽花の群れ
【人 賞】
暖かな春の日差しに包まれて希望背負って生まれた私
新しい制服カバン定期券希望に満ちるバスゆらゆらと
真っ赤だよ話聞くたび指摘され他人の恋が私を染める
青色の春を求めてここにいた次のページは何色だろう
【佳 作】
未来への期待を込めてここに立つ新たな決意春風にのせ
なんでもないいいたいことを我慢して続ける先に何が見えるの
群青の空のどこにも雲はなくそこにあるのは明日への期待
月曜日地獄の始まり幕が開く休み時間は心の休まり
夏終えて楽しき日々の思い出は静かに消えゆく秋の夕暮れ
ひこぼしと年に一度の会える日に短冊に書く晴れますように
雨の日はきれいな花が咲きまくる駅前の道たくさんの傘
美術室自分の動かす筆の音外から聞こえる風の音
飯盛の山に茂る木身に染みて成長をする若葉の我ら
人々はたちあがること知るために失敗したり涙を流す
あと少し届かなかった夢舞台無駄にはしない五人の涙
ダイエットするする詐欺はおてのもの食べたい気持ち抑えられない
朝電車やっと乗りこみ青ざめる留守番させた今日までの課題
桜散り別れの季節寂しかれ新たな夢とスタートダッシュ
ウトウトといすに座って船をこぐあなたの顔が見え隠れする
カブトムシ大きく育て夏の王命の限り強く生きろよ
夕が暮れ赤に溶けゆく青い空残照が消え藍が黒に染まる
桜見て新しい道歩き出し出会いの季節胸が高鳴る
夏が来たセミの鳴き声ミンミーン働きすぎだ七日の命
教室で君に触れるか触れないかそういう距離が心騒めく
教室で毎時間聞こえた笑い声青春電車もう終電
すこしでもみんなと共に戦いたいこの瞬間に願いを込めて
つらくてもどれだけ走って暑くてもいつも隣に七つの励まし
人間は個性豊かとよく言うが一体自分はどの色をもつ
テスト中記号問題まよったら天の神様毎回使う
届かない手を伸ばすほど遠くなるどこまでも続く果てしない空
友達と今年もしたいな公園で手持ち花火に線香花火
もう高三やりたいこともできないね毎日一つあきらめていく



【短大生入選作品】

【天 賞】
楽しみと不安が募る春の朝家を出たなら夢へ近づく
汗流し遠い校舎へ向う道私の未来ひらかれる道
【地 賞】
現実は時に厳しくつらいけど強く足踏みどんどん進め
これからの就職活動曇り空自分の努力で晴天にする
【人 賞】
今の時期遊びたいけどがまんをしふんばりどきだ将来のため
春が来る夢にみていた大学で見つけてみせる将来の道
【佳 作】
入学しはやく感じた三ヵ月期待と不安背負わせながら
夕方の犬のお散歩田んぼ道風に乗ってくる夏の匂い
なつかしい並んで帰った田舎道戻りたくなる開く卒アル
音響くみんなの音色キラキラと個性がキラリひとつのmusic(おんがく)
ありがとうこの一言が言えなくて母の背中をじっとみつめる
桜並木新たな生活胸躍るめざすあの夢二年後の私
地平線夕日のみこむ黒い海見える星は一等星
晴れた日にぱっと開いたとびらからながめる景色桜舞い散る
朝起きて窓辺から差す日の光今日も一日元気にいこう
青空に向って高く咲くひまわりひまわりのように元気に進もう



【大学生入選作品】

【天 賞】
おかえりと返ってこないドア開けて寂しく消えるただいまの声
前まではテレビで聞いてわからない専門用語わかる嬉しさ
【地 賞】
原付に半ヘル装備でいざ出陣田舎の夜道虫流星群
やりがいや笑顔にしたいそれだけでつとまらないと気づいた前期
【人 賞】
喧嘩してスッキリしたら仲直り大人になるほど出来なくなること
お母さん体位変換練習させて家族の支えが私のはげみ
【佳 作】
友達と毎朝登る急勾配夢に向かって一歩一歩
生活が変わり慣れない大学生変わらないのは学ぶことだけ
今年から平成終わり令和なる年を重ねて今を生きるよ
夜中まで課題に追われ帰り道夜景きらめき疲れ吹っ飛ぶ
日が沈み友と別れて改札で「また明日ね」といえる幸せ
実習で学んだ命の大切さ忘れずつなぐ夢への第一歩
患者さん緊張ばれて僕達を見守っている優しい目たち
朝日浴び目覚めた時にふと思う今何時だと焦りを覚え
秋の日の風心地よく眠くなりお出かけ日和寝たまま過ごす
夏休み久方ぶりに会う友と近況話しなごむ一日


編集後記

 『飯盛嶺』第二十一歌集をお届けいたします。
 四條畷学園で学ぶ児童・生徒・学生を中心として保護者の皆様そして教職員の今を生きるひとつの姿がこの歌集に結集されています。自分が感じたことをどのような表現で五七五七七の音律にのせようかと考えることは、自分の生命(いのち)と向き合うことと同じです。秀逸な作品も拙い作品も等しく愛おしい作品です。令和元年のありのままの歌集をご鑑賞ください。
 第二十一歌集の発行にあたり、児童・生徒・学生にご指導いただきました先生方をはじめ、さまざまなところでご助力・ご支援をいただきました多くの関係者の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

四條畷学園 飯盛嶺歌壇委員会 

 

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